ダニーボーイ

解剖生理学Ⅱ 解剖実習レポート

1、看護の実践と人体の構造(フィジカルアセスメントと看護援助における関連性)

看護におけるフィジカルアセスメントとは、対象の身体的健康状態を観察・評価することをいう.看護師は対象となる患者のアセスメントにおいてもケア行為においても、ほとんど非侵襲的・非観血的な技術を使用するので、体表解剖の知識を不可欠、またもっとも重要なものとして学んだ.体表解剖とは、骨格と臓器・組織の位置との対応関係を明らかにする解剖学の方法である.具体的には、体表、つまり皮膚上に特出している骨格の突出部を手がかりに心臓や肺、腎臓や肝臓などの臓器や血管、神経の正確な位置を知ることである.今回の解剖実習では、学んだ体表解剖の知識を実際の人体で確認し、更に体内の構造いついても学ぶことが出来たと思う.以下に学びのいくつかを記す.

1)肺のフィジカルアセスメントと構造
肺は呼吸のうち外呼吸を行う場であり、肺胞内での空気と血液との間のガス交換を行っている.これは看護者がフィジカルアセスメントで扱う重要な項目である.呼吸(外呼吸)の内実は「換気」、「拡散」、「肺循環」である.肺胞部で行われる「拡散」については確認できず、肺循環は心臓のしくみから伺えた.「換気」とは気道を中心として肺に出入りする空気の移動のことであり、今回の解剖実習では・気道の実際の太さ、長さ、を確認できた.また、呼吸運動の際、肺はそれ自体で膨大、収縮せず、呼吸筋の動きによってその大きさを変えるわけであるが、その吸気時に収縮する肋間筋、横隔膜の位置も確認できた.肺自体の大きさについては、液体で大きく膨らんでいる状態であり、実際の膨大、縮小がどの程度かはわからなかったが、肺が取り出された胸腔から肺の動きについてイメージすることが出来た.肺の葉がはっきりと分かれていることを確認し、特に右の中葉が前面からしか確認できず、中葉に問題がある場合の呼吸音は前面からしかアプローチできないのだと確認できた.

2)心臓のフィジカルアセスメントと構造
心臓については、上下の大静脈→右心房→三尖弁右心室→肺動脈(弁)→肺→左心房→僧帽弁→左心室→大動脈(弁)という血液の循環の流れを確認できた.それぞれの弁の実際の形も確認し、逆流を防ぐ仕組みについて実感できた.
心音聴診の際に房室弁(Ⅰ音)、動脈弁(Ⅱ音)のそれぞれが閉じる音を聞くことをイメージしたが、これは実際に動いていない状態では難しかった.ただし、Ⅱ音が聞こえるエルプ領域にあたるところが大きな血管の近くであるのだということは確認した.
最大拍動点(第五肋間鎖骨中線)についてもその位置を確認した.
しかし、心臓についてで最も印象的であったのは臓器の周り取り巻く、冠状動脈の意外な太さであった.

3)肝臓のフィジカルアセスメントと構造
肝臓はその大きさが印象的であった.肝臓が組織的に変化してしまっている状態も確認でき、肝腫大の際にのみ容易に触れることが出来るということをイメージした.

4)腸のフィジカルアセスメントと構造
腸は解剖が進んでおり、小腸などは教科書などで見る生体のような位置関係にあるものは少なく、その走行については、イメージしづらかった.腸間膜の大きさに意外さを感じたが、臓器が垂れ下がっている様子を伺えた.直腸に便塊の残っている場合もあり、直腸にアプローチするケアのさいにどの程度の長さが適切か、想像した.
5)その他の部位のフィジカルアセスメントと構造
腎臓の位置、腹後器官でかなり上部にあること.腎動脈、静脈の本数がまちまちであることを確認した.坐骨神経の太さと走行について、実感した.関節の大きさと靭帯によって守られているさまを確認でき、それによって可動域の制限が加わることを想像した.脳について、頭蓋骨の厚さについて確認した.椎骨の断面から、椎間板の厚さ、クッションになっている様子、体幹の変移した際の柔軟性について想像した.

2、解剖実習の感想
11月2日水曜日、私たちは○○にて、解剖実習を行った.所定の場所で着替え、準備を済まし、数十体のご遺体が、安置されている実習室に入った.指導してくださる先生の説明を聞き、黙祷を行った後に、ご遺体と対面し、約二時間の間、貴重な体験をさせていただいた.最初のうちは我々も緊張していたが、指導してくださる先生方の丁寧な説明もあいまって、次第にリラックスして、学びを深めることが出来た.それぞれのご遺体の、個別性について、確認しながら、人体の構造について、そしてよく言われることであるが、その見事な仕組みについて、時間をかけて、確認し、また、視覚のみならず、臓器一つ一つの質感、重さ、触感により、教科書ではわからない情報を、感じ取ることが出来た.この構造を多面的に「実感」出来たことが、解剖実習における最も大事な収穫であったと思う.これからも人体の構造についての理解を深めていくつもりであるが、この日に「実感」したことを大事にし、生きている人体へのアプローチ(看護上はフィジカルアセスメント=体表からの観察、及びケアが中心になると思う)に生かして行きたい.
 お世話になった方々皆様に感謝し、また、献体者の皆様のご冥福をお祈りするとともに、その尊い意思とご遺族の方々の理解に深く感謝をいたします.ありがとうございました.(モスバーガーで二時間で書いた)